音も、映画も、さよなら出来ない。~松野泉の仕事~

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9/9(土) 『労働者階級の悪役』

労働者階級の悪役

平波亘監督とは2008年のPFFで出会った。平波監督の『scherzo/スケルツォ』という作品が面白くて話しかけたのが最初だったと思う。不敵に笑う人という印象だった。まさか平波監督の映画に出演する事になるとは思ってもみなかった。撮影中は毎日ライブのつもりでただ歌う事に集中していた。役作りの為にお風呂に入ってないという役者さんがいた。労働者役の出演者は皆良い顔をしていた。そして熱かった。この人達の群像劇が観たいと思った。撮影後、東京上映のイベントで今や有名になったミュージシャンやアイドルの人達と共演させてもらった。華やかで落ち着かず、焼酎をガブ飲みし、関西から上京していた先輩達とライブ中に騒ぎ、アイドルの出番前にステージで踊ったりしていたら、後日ミュージシャンの方のブログに「松野泉殺す」と書かれていた。猛省。

 

監督 平波亘
音楽 松野泉
出演 松野泉/見汐麻衣/木村知貴/小澤雄志/劔樹人/宇野祥平/橋野純平/礒部泰宏/三宅唱/山本政志
作品データ 2012年/68分

 

9/10(日) 『太秦ヤコペッティ』

太秦ヤコペッティ©SHIMAFILMS 2013

魚が七輪で焼かれている。脂が灰に落ちて「ジュワッ」と音を立てたり、皮が火に焼かれ「チリチリ」と音を立てる。それらの音が陶器の中で反響して「シュワン」になったり、「チワンチワン」と鳴ったりする。そういう事を宮本杜朗監督はずっと楽しんでいたように思う。この映画の大胆な設定も、突拍子もないアイデアも、暴力も、素朴な好奇心や発見に支えられている。だから『太秦ヤコペッティ』はいつだって、過激に今の観客の脳内を刺激するだろう。主演を務めた和田晋待さんの音楽にドーパミンダラダラ垂れ流しながら観てください。こんな映画宮本監督の他に誰も作れない。

 

監督 宮本杜朗
録音 松野泉
出演 和田晋侍/キキ花香/小沢獅子丸/北原雅樹
作品データ 2013年/83分

 

9/11(月) 『二十代の夏』

二十代の夏

伊豆大島という東京から船で2時間程の場所で撮影されたこの映画は、まるでヨーロッパの避暑地を舞台にした恋愛映画のように、日常からの心地良い距離を感じさせてくれる。しかし同時に、この映画の主軸になる登場人物達はみんな島の外からやってきた人達である。島の自然や大らかな人達に見守られながら、ちっぽけな自我や恋愛観に翻弄される主人公の様子は、滑稽で痛ましくもチャーミングで愛おしい。高野徹監督が実際に島で生活し、出会った人達や、過ごした時間がスクリーンに豊かな広がりを生んでいるように思う。宮殿という名の飲み屋で、工事関係者達のカラオケを横目に、カウンターから手作りのパサパサしたポテトサラダを出し、「東京で穴に埋められた」という話をしてくれた女性の姿が忘れられない。

 

監督 高野徹
録音 松野泉
出演 戎哲史/福原舞弓/島津恵梨花/丸山昇平
作品データ 2017年/42分

 

9/12(火) 『Dressing Up

DressingUP

少女と化物を、大きな丸い月が窓から覗いている。月明かりにぼんやりと照らされた場所に、もう既に失われた筈の時間がぼんやりと立ち上がっている。その朧げな場所で繰り広げられる両親の幸せな食卓の様子も、母親の狂った姿も、少女にとっては未知の出来事だ。しかしその光景を観ている私はそれを懐かしいと感じる。安川有果監督は過去を現在に召喚させ、取り返しのつかない出来事を、現在の生きる時間の中で救済しようとする。それはある種無謀な挑戦のようにも見える。しかしその挑戦は「祷キララ」という女優の杞憂な佇まいを借りて見事な成果を上げる。祷キララがカメラの前に立つ時、化物でさへもこの世ならざる者ではいられない。

 

監督 安川有果
録音・音楽 松野泉
出演 祷キララ/佐藤歌恋/渡辺朋弥/鈴木卓爾
作品データ 2012年/68分

 

 

9/13(水)『GHOST OF YESTERDAY

GHOST OF YESTERDAY

伊月肇監督と大阪芸術大学卒業後に出会い、脚本、制作として参加して頂き、作り上げた長編映画です。この作品を制作した後、僕が共同脚本、制作として参加し『-×-(マイナス・カケル・マイナス)』が製作されました。『-×-(マイナス・カケル・マイナス)』にも出演された寿美菜子さんと出会ったのもこの映画です。妹役の女優が見つからず、関西の事務所を探し歩いていた時、ある事務所で、背筋をピンと伸ばし、学校の授業でも受けるような真面目な顔で映画のDVDを見ていた寿さんの姿を見つけた事を昨日の事のように思い出します。その日は小躍りして帰りました。その後寿さんは声優として活躍されています。撮影の高木風太と監督として初めて仕事をしたのもこの映画です。

監督・脚本・編集・音楽 松野泉
出演 西村仁志/寿美菜子/玉置稔/原尚子/井内菜摘
作品データ 2006年/128分

 

 

 

9/14(木) 『YESTERDAY ONCE MORE

yesterday once more

大阪市の文化事業CO2の第3回にて製作された映画。同年に選出されたのは宮本杜朗監督、横浜聡子監督、石井裕也監督、岡太地監督でした。岡太地監督(『川越街道』)にロケ地協力頂き、京都府唯一の村、南山城村で撮影が行われました。村で準備を重ねている最中、市内でノロウイルスが流行しているというニュースを聞き、その名称のイメージだけが先行し、何かとても恐ろしい事が自分達の知らない場所で起こっているような気がしたのを覚えています。早朝には霧が一面に立ち込め、撮影隊ごと異世界に迷い込んでしまったかのようでした。

監督・脚本・編集・音楽 松野泉
出演 西村仁志/井内菜摘/吉塚拓哉/中村愛
作品データ 2007年/117分

 

 

9/15(金)  伊月肇短編集

今回の特集上映では伊月肇監督の『-×-(マイナス・カケル・マイナス)』以降に撮られた3本の短編映画を紹介。伊月監督の映画には密度と重さがある。誰にでも起こりうるような人生の断片を切り取った短い物語の中に、登場人物が積み上げてきた時間や、その重みがちゃんと映し込まれているように思う。何故そのような事が起こるのか。倫理を超えたどうしょうもない気持ちを抱えながら、壊れる事も、おざなりにやり過ごす事も出来ない、生きづらさを抱え真剣に生と向き合う登場人物達の姿。その姿は、伊月監督の映画に対する不器用だけど嘘のない誠実な態度に重なります。『籠の中』『トビラを開くのは誰?』の撮影を高木風太(『味園ユニバース』『セトウツミ』)、『The Light Dances』の撮影を四宮秀俊(『Playback』『貞子VS伽椰子』)という東西若手注目カメラマンが担当している。

 

『トビラを開くのは誰?』

トビラを開くのは誰?

 

監督 伊月肇
共同脚本・音楽 松野泉
出演 鈴木知憲/優恵
作品データ 2011年/15分

 

『籠の中』

籠の中©「全力映画」製作委員会
監督 伊月肇
録音・音響効果 松野泉
出演 松本ふみか/佐藤亮/木村紗貴/久保陽香
作品データ 2013年/35分

 

 

The Light Dances

the light dances©Hajime Izuki / Happy Tent
監督 伊月肇
音楽・録音・音響効果 松野泉
出演 蒔田彩珠/渡邉奏人/清瀬このは/優恵
作品データ 2016年/24分

 

 

全作品解説:松野泉

上映期間 9/9(土)~9/15(金)
上映時間 20:50
当日料金 一般・大・高:1,300円/シニア:1,000円
備考 ★『さよならも出来ない』チケットor半券提示:1,000円
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