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福岡県・英彦山の中腹にある「九州大学彦山生物学実験施設」を、4年にわたって取材する。90年近く手入れをされながら、現在も大切に使用されている施設の歴史と、生息する多様な昆虫たち、そして施設に集う虫を愛する若き研究者たちの熱い思いをていねいに描く。大人も子供も彦山に行きたくなる魅力に溢れた一本。
監督:児玉公広
作品データ:2025年/116分/日本
特定の信仰のもとで育った、いわゆる“ 宗教2世” の詩人iidabii(イーダビー)が、 自身の過去と向き合いながら「言葉を失わずに生きること」を探し続ける姿を、3年にわたって追いかける。信念や価値観の違いが生む分断を越え、人が人としてつながるための“ 対話”を模索し行動する、ひとりの詩人の苦悩のドキュメント。
監督:松井秀裕/共同監督:津田友美
作品データ:2025年/106分/日本
長野から単身上京し音楽活動をしている22才のハギノオウスケが、モテたくて結成したロックバンド「mote mote band」。真っ直ぐな歌と力強い演奏でライブで人気を得るが、ハギノのモテたい願いを残しわずか一年で解散。なぜ彼はモテないのか。そもそも「モテる」とは何か。不思議な人間像が、多くの友人たちの証言で浮かび上がる。
監督:浜田真悟
作品データ:2025年/89分/日本
普段は故郷の富山県で林業に従事するミュージシャン、W.C.カラス。酒を愛し、客に媚びない独自の音楽性で知られる彼は、やがて浪曲とブルース/ロックンロールを組み合わせた「ローキョックンロール」の制作に没入していく。60 歳を超えても変化を恐れず、己の眼差しで時代と対峙しようとするひとりの男の肖像が描かれる。
監督:今成夢人
作品データ:2025年/77分/日本
コロナ禍を経験した、中国・武漢の住民8人へのインタビュー。中国ではコロナ禍について公に語ることが許されておらず、「あの時」は無かったかの様に忘れられようとしている。リスクのある中で「あの時」の苦しみと喪失を語る住民たちの声は、単なる記録を超え、忘却への抵抗、言論統制への反発となって国境を越える。
監督:北鹿
作品データ:2024年/86分/日本
阿蘇連山を望む熊本・産山村で、“あか牛の神様”といわれた畜産家がいる。「牛は草で育つのが本来の姿」を信念に地域の循環を守り続けてきたが、86 歳となった今、妻は亡くなり、過疎化は進む一方だ。それでも村への想いを抱く父の偉大な背中を見てきた息子は何を思うのか。雄大な自然を舞台に、親子の暮らしを見つめる。
監督:小林瞬、中村朱里
作品データ:2024年/102分/日本
インド・ベンガル地方、歌う修行の伝統を持つ吟遊行者「バウル」を30年以上続けてきたパルバティ・バウルが来日し 、東北など、日本の修行文化が息づく地で奉納演奏を行った。インドの最高階級に生まれながらも、バウルの道を歩んできた彼女が日本で出会った新たな“行”とは? 彼女の歌声が、私たちの未来を照らし出す。
監督:阿部櫻子
作品データ:2024年/109分/日本
石橋義正監督の劇映画『唄う六人の女』が撮影地にもたらした変化を、一年半にわたり追ったドキュメンタリー。「自然との共生」をテーマに京都・奈良で制作された同作の影響を、映画撮影から上映まで、市職員や関係者の姿を通して描く。地域社会の中で映画はどのように共鳴し、人々の意識や行動に変化をもたらしたのか。
監督:清水大志
作品データ:2025年/83分/日本
「紅線(レッドライン)」とは、越えてはならない、あるいは譲れない一線のこと。2019 年の民主化運動の後、香港では国家安全維持法が施行され、言論の自由が急激に奪われ、民主派の新聞は次々と営業停止に追い込まれた。それでも取材を続けようともがく記者たちの3年間の葛藤を記録する。完成後、佐藤は急逝し遺作となった。
監督:佐藤充則、平野愛
作品データ:2024年/143分/日本
中国貴州省の少数民族・トン族が住む岩洞村では、自給自足の生活と「大歌」を唄う伝統が今も息づいている。だが都市化と情報化の波は村にも及び、若者は都会の生活に憧れ、村を出てゆく。伝統に背を向け、街で未来を切り開こうとするひと組の夫婦の奮闘やすれ違いを通して、現代中国の伝統への視線や家族観を問う。
監督:鄧茂榮(トウ・モエイ)
作品データ:2025年/68分/日本
震災後も営業を続ける岩手県・陸前高田市のジャズ喫茶に流れる、店主と常連の“ 日常の時間”を記録した『Johnny』、大阪・ミナミに一軒だけ残る芸妓がもてなすお茶屋に飛び込んだ見習いが、作法や稽古に苦戦しながら芸妓を目指す『鶴になる』。対照的な二つのお店で展開される、女性たちの安らぎと華やぎの記録。

監督:長谷川三四郎
作品データ:2025年/32分/日本
『鶴になる』監督:島田拓空也
作品データ:2025年/61分/日本
戦地に赴いたクリミア出身アーティストのビデオレポート『クリミア』。群馬県による「朝鮮人追悼碑」撤去問題にある 意識の断層を詩的に問う『森、すきま』。今なお続く遺骨収 集の意外な側面をみる『沖縄 戦没者遺骨収容 2025』。 終戦直前、米兵捕虜が処刑された「油山事件」実行者の葛藤をひもとく『最後の戦犯』。戦争の本質が、時を超え交錯する。
『QIRIM(クリミア)』監督:カテリーナ・フラムォヴァ
作品データ:2024年/10分/ウクライナ
『森、すきま』監督:チェ・イェリン(崔藝隣)
作品データ:2025年/16分/韓国
『沖縄 戦没者遺骨収容2025-ボランティアの組織的調査-』監督:宮ゆふき
作品データ:2025年/25分/日本
『最後の戦犯一残された手記ー』監督:福本日和
作品データ:2025年/25分/日本
認知症が進み、母語での介護を余儀なくされる在日韓国人高齢者に寄り添う『Blessing Lies Her e』。かつてからマンモス団地に暮らす高齢者と新たな住民との交わりを描く『憧れの暮らし、常盤平団地』。母語の喪失に直面する外国籍住民のケアにフォーカスする『はざま』。多様化する在留外国人コミュニティや、共生のありようを最前線でみつめた3 本。
『Blessing Lies Here』監督:倉田清香
作品データ:2025年/11分/日本
『憧れの暮らし、常盤平団地』監督:加藤温
作品データ:2025年/32分/日本
『はざま – 母語のための場をさがして-』監督:朴基浩(パク・キホ)
作品データ:2025年/39分/日本
辺野古の米軍基地建設に抗議するカヌー隊と、抗議中に起きた事故の裁判を描く『水平へ漕ぎだす 辺野古海上行動と裁判闘争』。岡山県で、福島第一原発事故の罹災者を一定期間受け入れる「保」に密着した『マイプレイス‒保養という選択』。メディアで報じられなくなっても続く日々を生きる人々の、思いや葛藤に向き合った2 本。
『水平へ漕ぎだす 辺野古海上行動と裁判闘争』監督:吉岡千絵
作品データ:2025年/38分/日本
『マイプレイス ―保養という選択』監督:渡辺嶺也
作品データ:2025年/59分/日本
リアルな赤ちゃん人形「リボーンドール」を携え愛しむ3名の女性が、率直な心情を明かす『リボーンドールと生きる』。29 年勤めた局を追い出されたラジオDJ ジェイムス・ヘイブンスが、自前でFMラジオ局を作るまでの壁を描いた『Never Give Up それでもラジオ!!』 積み重ねられたインタビューが、必要とすること、されることの意味を問う。
『リボーンドールと生きる』監督:二階堂萌花
作品データ:2024年/10分/日本
『Never Give Up それでもラジオ!!』監督:松永安浩
作品データ:2025年/58分/日本
親族の老いや認知症など、にわかに受け入れ難い現実を前に、映像作家はどう向き合うのか。入院中の夫と離れ、一人暮らす祖母の暮らしを静かにみつめた『春一番』。親しみを崩さず、祖母への愛が画面から溢れる『ばあば』。認知の進行に戸惑いながらも、1年にわたり母の姿を美しくカメラに収めた『夕日に舞う』。三者三様の記録。
『春一番』監督:赤川純
作品データ:2024年/18分/日本
『ばあば』監督:伊藤佑里香
作品データ:2025年/28分/日本
『夕日に舞う』監督:仲村淳
作品データ:2025年/30分/日本
ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患い在宅で暮らすさゆりと、重度訪問支援者として彼女の暮らしに寄り添うまき。彼女たちの日々の楽しみや社会とのかかわりを描いた『because time is lif e』。難攻不落の“ 悪魔のレース”に挑み続けるプロトレイルランナーの挑戦を追った『メインクエスト2』。それぞれに灯る命の輝きを、カメラが捉える。
『because time is life』監督:天野澄子
作品データ:2025年/32分/日本
『メインクエスト2 ~穢れなき負け犬の遠吠え~』監督:上原源太
作品データ:2025年/45分/日本
身体のタブーを3人の女性がそれぞれの母国語で語る『絨毯の下から』。理想の青を求め藍染を極める男たちを捉える『色をこえて青を見る』。フィルムアーカイブでの修復作業を圧倒的映像美でみせる『あと数世紀』。AIが「外れ値」として排除する、ある少数者の存在に耳を傾ける『AI が消し去る声』。信念や美学に彩られた4つの短編。
『絨毯の下から』監督:小野遥香、マリア・ヴェラスコ
作品データ:2025年/7分/フランス
『色をこえて青を見る』監督:シビラ・パトリチア
作品データ:2024年/16分/日本
『あと数世紀』監督:ラファエル・マルタン=デュマゼール
作品データ:2024年/19分/フランス
『AI が消し去る声』監督:窪田望
作品データ:2025 年/26分/日本
カーボヴェルデ北西部のサンヴィセンテ島。アルコールと薬物依存に翻弄されながら日々を生きるカルロスの背後にあるのが、カーボヴェルデに深く根ざした感情「ソダーデ」。カルロスの声と記憶、そして音の風景をとらえることで、奴隷制の時代から音楽を通してこの国に受け継がれてきたソダーデの一端を映画は映し出す。
『カルロスのレシピ』監督:青木敬、長良将史
作品データ:2025年/107分/カーボヴェルデ・日本
ケニアで約20 年に一度行われる、マサイ族の成人戦士への通過儀礼「エウノト」と、カナダ・アルバータ州で行われる、ネイティブアメリカンの伝統的な祭り「パウワウ」をそれぞれ記録した作品。儀礼に挑む若者の繊細な表情や、祭り自体が持つエネルギーをとらえた多様で迫力あるカメラワークは、スクリーンに映えること間違いなし。
『マサイ・エウノト』 監督:キレ・ゴダール
作品データ:2025年/34分/ケニア
『天幕の下で』監督:ハーレー・モーリン
作品データ:2025年/45分/カナダ
タイ北部の少数山岳民族・モン族のシャーマン、ジーネーンが日常生活と憑依を行き来するさまを、マルチカメラとモノローグで省察する『アット・ザ・ドアウェイ』。『ムル族の犠牲祭』は、バングラディシュ・チッタゴン近郊の丘陵地に暮らす先住民ムル族の儀式にカメラが密着。村の暮らしと、牛を神に捧げる様子がよくわかる好編。
『アット・ザ・ドアウェイ』 監督:エマ・ヴォルツ、ソフィー・ヴィタカー、サラ・ソワード・テイラー、ケイト・マッケラ
作品データ:2025年/15分/タイ・アメリカ
『ムル族の犠牲祭』監督:マシュルクル・ラーマン・カーン
作品データ:2025年/60分/バングラディシュ
「コロストラム」とは出産後に最初に出る乳のこと。スイス・アルプスのふもとで酪農を営むパスカルのもとに、夏の間、ボランティアとして都会暮らしのソレーヌがやってくる。土地や家畜の世話をする厳しさを味わいながら、対話を続ける二人を通して、酪農を独自の視点で見つめた、スイス出身・在住の日本人監督の長編デビュー作。
『コロストラム』監督:水野さやか
作品データ:2024年/75分/スイス
中国雲南省、ミャンマー国境近くにある少数民族ワ族の集落「翁丁」を、10 年にわたり記録する。「中国最後の伝統集落」と呼ばれ、300 年近く続いてきた生活だったが、政府の政策で村人は移住を余儀なくされ、古い集落は観光開発がなされた。やがて村で壊滅的な火災が起き……。失われた村の暮らしもたっぷりと描かれた大作。
『翁丁 T he Last Tribe in China』 監督:劉春雨(リュウ・シュンウ)
作品データ:2024年/135分/日本
ルワンダのトゥワの家族に突如起きた喧嘩が、やがて収束し皆で踊り出すまでのリズムをワンカットで記録した『ドッグ・シット・フード』。『ブズカシ- 男の地のアティルキュル-』はクルグズ(キルギス)の男たちが、頭を落としたヤギの胴体を馬上で奪い合う伝統遊戯。その背後にある、馬の飼育から生活のサポートまで、様々な局面で活躍する女性の存在にカメラは注目する。
『ドッグ・シット・フード』監督:ふくだぺろ
作品データ:2025年/22分/日本
『ブズカシ – 男の地のアティルキュル-』監督:ジャヌル・ジュスプジャン
作品データ:2023年/65分/キルギス
キルギスの山岳地帯にある小さな村コクタシュ。家事や育児を堅実にこなし、夫婦、嫁姑関係に折り合いをつけながら生きている主婦たちの楽しみは、なんとサッカー。トーナメント戦を企画し、思う存分体を動かしてゲームを楽しむ女性たちの快活な表情が、キルギスの雄大な自然をバックに、日常生活と共に描かれる。
『キックオフ』監督:ロジャー・コレラ、ステファーノ・オビノ
作品データ:2024年/77分/ドイツ・スペイン
歴史的にも繋がりの深い日本と台湾の関係を、映画で探るプログラム。台湾と日本の知られざる歴史や、日本では公開の機会が限られる作品をセレクション上映。
日本統治時代に青春を過ごした台南女子高の“ 日本語世代” の卒業生たちが、激動の戦中・戦後経験を語る。日本式の教育を受け、差別がありながらも学校生活を楽しんだ日々が一転、戦後に流入した中国式の教育に戸惑う。二つの国に翻弄されながら、時代の荒波を乗り切った誇りと、今も心の拠り所となっている友情が描かれる。
『夢の中の故郷』 監督:吳宏翔(ウー・ホンシャン)
作品データ:2017年/80分/台湾
日本統治時代の初期、伝統法を守りながら7年にわたって抵抗した先住民タイヤル族の知られざる戦いを描いた『火種を再燃させる』。第二次世界大戦に従軍し、終戦後3年半にわたってシベリアに抑留された台湾人の元日本兵の、波乱の人生の最終章を捉えた『いつの日にか帰らん』。複雑な日台関係史の一断面が見える2本。
『火種を再燃させる-1900~1907 年のトパ戦争-』監督:曾宇平(べヒュー・マサオ) 高俊宏(ガオ・ジンホン)
作品データ:2025年/53分/台湾
『いつの日にか帰らん』監督:楊孟哲(ヤン・モンチー)
作品データ:2022年/55分/台湾
近年、台湾各地に開業している独立系書店15 店を訪ね、個性あふれる店舗の様子や人間模様を詩的に描いたオムニバス・ドキュメンタリー。街角、山、海辺など、様々な場所に書店をつくる経営者や、そこに立ち寄り、本を求める人々の周りにある、豊かで安らかな時間と空間を、カメラはそのまま、包むように記録する。
『ポエトリー・フロム・ザ・ブックストアーズ』 監督:侯季然(ホウ・チーラン)
作品データ:2025年/90分/台湾
今年4 月に急逝した佐藤充則監督と、今年8 月に逝去した当映画祭スタッフ澤山恵次を偲び、彼らが愛し、上映に力を込めた過去のグランプリ作品を特別に上映。
監 督:木川剛志
作品データ:2021年/107分/日本
1947 年、戦後の横須賀に日本人の母と外国人の父との間に生まれた木川洋子(Yoko)は、当時の過酷な状況のなか、養子縁組でアメリカに渡り、母との離別を余儀なくされた。母はどのように生きたのか、SNSをきっかけに、彼女のルーツ探しが始まった。横須賀~アメリカ~八王子をたどる、奇跡的ともいえる出会いの旅の記録。
上映後トーク
木川剛志(本作監督)×松崎まこと(映画活動家)
監 督:佐藤充則、平野愛
作品データ:2022年/117分/日本
2019 年、香港では自由と民主化を求める大規模な抗議デモが勃発。警察の暴力に抵抗するデモ隊を、市民や学生の立場で支持し、撮影する人々がいた。しかし破壊行為への反感から政府支持の市民も現れ、デモは行き詰まる。分断の進む中、もがきながら記録を続けるトラック運転手や学生記者に密着し、激動の香港に生きる人々の姿を見つめる。
上映後トーク
平野愛(本作監督)×阿古智子(東京大学教授)
主催:neoneo編集室
| 上映期間 | 12/6(土)~12/19(金) |
|---|---|
| 上映時間 | 10:00 |
| 当日料金 | 一般:1,600円/大学・高校:1,400円/シニア:1,200円/小中学生・障がい者(同伴者1名まで):各1,000円 |