21世紀、ジャック・タチが復活する。おかしな郵便配達フランソワが、奇妙な紳士ユロ氏が、きまぐれな風とともに、やってくる。四角張った世界に、彼らはちょっとしたつむじ風を巻き起こし、こわばりを解きほぐす風変わりな天使なのだ。そこでは正しい方向を示すべき矢印は、あやふやに回転し、人を生真面目な日常生活の軌道から逸脱させ、ロータリーを走る車たちは、メリーゴーランドの木馬となって、無償の回転運動をはじめるだろう。さしたる変化もなく反復される日常生活が、あるいは避暑地でもてあます退屈な休暇の日々が、そのまま歓ばしき「祭りの日」へと変貌する。
映画の至宝タチ映画の「祭りの日」がやってくる。フランソワやユロ氏とともに、われわれもしなやかに、きまぐれな風の吹くままに歩みはじめよう。
PROFILE
ジャック・タチ Jacques TATI :1907年10月9日、パリ郊外ル・ペック生まれ。本名はジャック・タチシェフ。
祖父はロシアの伯爵の称号を持っていた。家業である額縁職人の見習いをするのだが、兵役のときの経験を元にパントマイム役者の道を目指すとともに、ラグビーにも興じ、クラブチームに参加。30年、そのチーム主催の公演で初めてスポーツを題材としたパントマイムを披露した。33年からミュージックホールの舞台に立ち、作家コレットにも絶賛されるなど人気を集めるが、家名を尊重する父親からは勘当される。
36年にはルネ・クレマン監督の短篇『左側に気をつけろ』の脚本・主演をこなすなど、3本の短編映画に出演&脚本に参加。45年には、クロード・オータン=ララ監督の『乙女の星』『肉体の悪魔』の2作品に出演した。46年、ルネ・クレマンが自作のために監督をタチに譲ったため、監督第一作『郵便配達の学校』('47)を完成。この作品に登場する郵便配達夫フランソワのキャラクターを出演させた長編第一作『のんき大将脱線の巻』('49)を公開したところ、大評判となり、ヴェネチア映画祭脚本賞、フランス・シネマ賞を受賞。
53年『ぼくの伯父さんの休暇』はカンヌ映画祭国際批評家連盟賞、ルイ・デリュック賞に輝き、まったく新しい喜劇映画として評判を呼ぶ。風変わりな主人公ユロ氏は今なお人気を保ち続ける不朽のキャラクターとなった。58年の『ぼくの伯父さん』はカンヌ映画祭で審査員特別賞、アカデミー賞外国語映画賞に輝き、世界中で大ヒット。ところが膨大な制作費と3年の歳月をかけて製作した超大作『プレイタイム』はあまりにも斬新だったため興行的に失敗し、フランソワ・トリュフォーに擁護されたものの、タチは莫大な負債を抱えることに。
71年の監督・脚本・主演作品『トラフィック』でユロ氏がスクリーンに最後の登場を果たした。73年、スウェーデンのテレビ局に依頼され、『パラード』を監督する。77年に全作品に対してセザール賞が贈られた。
82年11月4日死去。
上映作品
「ぼくの伯父さん」「ぼくの伯父さんの休暇」「のんき大将〈カラー版〉」「郵便配達の学校」「左側に気をつけろ」「ぼくの伯父さんの授業」「プレイタイム」
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